AHTとは?
AHTは「Average Handling Time」の略で、コールセンターやカスタマーサポートの業界でよく使われる用語です。
これは1つの顧客の問合せを処理するのに要する平均的な時間を示します。
AHTは通話時間、保留時間、後処理時間などを合計して計算されます。
実はこのAHTについて、言葉を知っている人は多いですが、「最適な時間が分からない」、「短縮してもどれくらいの効果が得られるかが分からない」という話をよく聞きます。
今回はAHTの変化で、コールセンターの応答率・必要席数がどれだけ変わるのか?について、アーラン式を用いて検証しました。
今回の検証において、以下を共通条件とします。
・目標応答率は90%以上
・AHT:10分、9分、8分の3パターン
AHTと必要席数と応答率
AHTの変化と席数と応答率一覧 ByアーランC式
AHTと席数の変化による想定応答率について、アーランC式で計算した結果です。
各AHTにおいて、応答率90%超となるポイントを色付けしてみました。
1時間あたり着信10件の場合の応答率
AHT | 3席 | 4席 | 5席 |
---|---|---|---|
8分 | 83% | 95% | 99% |
9分 | 78% | 93% | 98% |
10分 | 71% | 91% | 97% |
1時間あたり着信50件の場合の応答率
AHT | 11席 | 12席 | 13席 |
---|---|---|---|
8分 | 92% | 96% | 98% |
9分 | 85% | 92% | 96% |
10分 | 73% | 84% | 92% |
1時間あたり着信100件の場合の応答率
AHT | 19席 | 20席 | 21席 | 22席 | 23席 |
---|---|---|---|---|---|
8分 | 92% | 95% | 97% | 99% | 99% |
9分 | 79% | 87% | 92% | 95% | 97% |
10分 | 56% | 70% | 80% | 87% | 92% |
AHTと必要席数
まずは、目標応答率を達成するための必要席数が、AHTの変化によってどう変わるか?に絞って考えました。
1時間当たりの平均着信数が10件の場合
AHT | 必要席数 | 応答率 |
---|---|---|
8分 | 4席 | 95% |
9分 | 4席 | 93% |
10分 | 4席 | 91% |
1時間当たりの平均着信数が10件の場合、各AHTにおける条件をクリア(応答率90%以上)するための必要席数と、想定応答率を抽出しました。
この条件での必要席数は、8分・9分・10分どの場合も4席となり、変わりませんでした。
1時間当たりの平均着信数が50件の場合
AHT | 必要席数 | 応答率 |
---|---|---|
8分 | 11席 | 92% |
9分 | 12席 | 92% |
10分 | 13席 | 92% |
次に1時間当たりの平均着信数を50件と、大きく件数を増やしてみました。
AHTが8分の場合は11席、9分の場合は12席、10分の場合は13席と、目標応答率90%を達成するために必要な席数が変わっている事が分かります。
1時間当たりの平均着信数が100件の場合
AHT | 必要席数 | 応答率 |
---|---|---|
8分 | 19席 | 92% |
9分 | 21席 | 92% |
10分 | 23席 | 92% |
最後に1時間当たりの平均着信数を100件と更に件数を増やしてみました。
AHTが8分の場合は19席、9分の場合は21席、10分の場合は23席と必要席数の違いが大きくなった事が分かります。
AHTと応答率
今度は、席数は変わらずAHTが変わると応答率がどうなるか?を、検証しました。
AHT8分で応答率が90%を達成出来る際の席数を基準に、各AHTにおける応答率を抽出しています。
1時間当たりの平均着信数が10件の場合(4席対応想定)
AHT | 応答率 | 占有率 |
---|---|---|
8分 | 95% | 33% |
9分 | 93% | 38% |
10分 | 91% | 42% |
AHT8分で応答率90%以上を確保するための必要席数は4席ですが、AHT10分の場合も同じく4席で応答率は90%確保出来る結果となりました。
ただし、AHT8分とAHT10分では応答率に差が出た(95%⇔91%)他、コミュニケーターの占有率にも違いが出ています。
1時間当たりの平均着信数が50件の場合(11席対応想定)
AHT | 応答率 | 占有率 |
---|---|---|
8分 | 92% | 61% |
9分 | 85% | 68% |
10分 | 73% | 76% |
こちらは、11席&AHT8分で応答率90%を達成できます。
しかしAHT9分では85%、10分では73%と大きく応答率が下がる結果となりました。
1時間当たりの平均着信数が100件の場合(19席対応想定)
AHT | 応答率 | 占有率 |
---|---|---|
8分 | 92% | 70% |
9分 | 79% | 79% |
10分 | 56% | 88% |
こちらは、19席&AHT8分で応答率90%を達成できます。
しかしAHT9分では79%、AHT10分では56%と非常に厳しい応答率&占有率となってしまいました。
特にAHT10分の状況は、電話は繋がらず、従業員もかなり疲弊しやすい環境と言えるでしょう。
まとめ
今回はAHTの変化に対して、コールセンターの必要席数・応答率がどれだけ変化するか?について検証しました。
結果、対応件数が多いほど、AHTの変化に合わせて必要席数・応答率が大きく変わる事が分かりました。
AHTはセンター全体の平均対応時間であるため、一人の優秀なコミュニケーターが素晴らしい数字を出しても、全体ではあまり変わりません。
適切なFAQの作成やエスカレーションの整備、後処理の効率化等、コールセンターの全体設計を最適化する事が大切です。
その上で目標をメンバー間で共有する事で、最適なAHTによる快適なコールセンター運用が実現できるでしょう。