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カスハラ対策とVOCの両立

カスハラ対策とVOC

昨今カスタマーサポート業界の大きな課題として、顧客の不当な要求や迷惑行為(カスタマーハラスメント ※以下:カスハラ)に対して、適切な対応を行ない、従業員を守る事が求められています。

またそれとは別に、サポート窓口の運用において、お客様の声(VOC=Voice Of Customer)を活かす事は非常に重要な要素となっています。

お客様の声はたとえ忙しくても歓迎します。
貴重なご意見を味方につけることによって、サービス品質を引き上げます。

~アジャイル型のコールセンター運用(仮)の原則の一つ~

これら「カスハラ対策」と「VOCを活かす」は、やり方を失敗すると両立が難しくなる領域であり、正しい理解が必要になります。
本記事ではこれらを両立するにはどうすれば良いか?について検証してみます。

コールセンターにおけるカスハラ

「カスハラ」は上述した通り、顧客の不当な要求や迷惑行為です。
特にコールセンターでは、以下のような思考回路から顧客が強気になりカスハラに至る事が多いです。

電話窓口相手だと強気になる理由

  • 電話の後は会わないため、あとくされがない。
  • 相手のリアクションがわからないため、傷つけている事に気付かない。
  • サービスに不満がある被害者として連絡した。自分に非はないので強く言っても問題ない。

またコールセンターでカスハラが横行する要因として、多くの窓口で「コミュニケーターから電話を切ってはいけない」と教えられることが多い点があります。
そのため、不当な電話に対しても切電出来ず、いつまでも応対を強いられることで負担を感じる事が多々あります。

コールセンターのカスハラ対策

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カスハラ対策の一案として、コールセンター側で「電話を切る権利」を持つ事が有効です。

「電話を切る権利」の効果

  • クレームの長時間化によるカスハラ化を防げる。
  • コミュニケーターは、「電話を切っても良い」という心の余裕を得る事が出来る。
  • コールセンター側の権利を定義付ける事で、不必要にへりくだった意識を持ちにくくなる。
    ※丁寧に対応する意識が弱まる可能性もあります。

他にも、「宣言した上で通話音声を録音する。」「AIによる自動応答で対応する。」等、様々な方法が考えられます。

カスハラ対策とVOCの両立は難しい?

ここでテーマである「カスハラ対策とVOCの両立」について考えてみます。
これらの両立が難しくなる理由は、「クレーム」の取扱いがそれぞれに関わってくるからです。

クレームとVOC

ほとんどのお客様は、商品・サービスに不満を持っても何も言わないまま去っていく事が多いです。(※通称:サイレントクレーマー)

対して、商品・サービスへの意見を連絡してくれるお客様は重要な存在であり、実は経営者の多くはこういった意見を歓迎しています
クレームとして挙がってくる事も多いですが、これらは貴重な意見(VOC)としてサービス改善に役立ち、重宝されるからです。

クレームとカスハラとVOC

クレームの温度感が高くなると、不当な要求や暴言等が生じカスハラ化する可能性が高まります。
そのためコミュニケーター目線では、「クレーム=カスハラ」と考えやすくなります。
仮に上述した「電話を切る権利」を乱用すると、多くのクレームを拒否するようになり、VOCが届かなくなってしまいます。
総じてカスハラ対策は、VOCを制限する事が多いため、これらは両立が難しいとも言えます。

それでは、どのようにすればカスハラ対策とVOCを両立できるのでしょうか?

カスハラ対策とVOCの両立方法

前提:クレームとカスハラは違う基準で考える

前項の通り、まずはクレームとカスハラは違うという事を認識する事が重要です。
①カスハラではないクレームと、②カスハラでもあるクレーム
特にこれら2つを別のものとして、①クレームには丁寧な対応をしVOCも得る、②カスハラでもあるクレームには毅然とした対応をする、といったように個別のルールを設定するのが良いでしょう。

方法1:「電話を切る権利」を、管理者・SVに限定する

「電話を切る権利」は、管理者・SV(出来れば複数)が都度判断し、決断する方法を推奨します。
カスハラは定義が難しいため、「●●という言葉が出たらカスハラ」、「声が大きく聞こえたらカスハラ」等、判断基準を明確にすることが難しいです。
そのため、コミュニケーターが各々で判断するのではなく、管理者・SVに限定し、定期的に管理者間で意識のすり合わせを行なう事で判断基準を統一すると良いでしょう。

乱用も避けられるため、VOCを損ねる事もある程度抑えられるはずです。

方法2:管理者・SVが積極的に対応交代する

カスハラ化する前にクレームを鎮静化する事で、カスハラ対策とVOCを両立させることも有効です。
ここでは筆者は「対応交代を積極的に行なう」という方法をオススメしたいです。

コールセンターでは、一次担当者が対応困難になった際、二次担当者として管理者・SVが対応を交代する事があります。
しかし多くのコールセンターでは、全体の業務効率を良くするためか「可能な限り一次担当者が対応する」という方針を持っているため、対応交代迄には時間がかかります。
その間、お客様は問題解決がされない状況が続き、クレームが悪化、カスハラ化に繋がることすらあります。

しかしクレーム対応のコツの一つとして、担当者を変えるという手法があり、早めの対応交代でこれらを防ぐことも可能です。

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クレームを嫌がる管理者・SVも多いかもしれませんが、コミュニケーターの信頼にも繋がります。

積極的に対応交代をすると良いことがあるかもしれません。

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カスハラ化しなければ、そのまま貴重なお客様の声を得る機会にもなりえます。

まとめ

今回はカスハラ対策とVOCの両立について検証しました。

カスハラは絶対にあってはいけないもので、対策は重要です。
コールセンターが事業に対して貢献できる大きなポイント「VOCの活用」もおざなりには出来ません。
今後のコールセンターでは、これらを両立する事を求められるでしょう。

今回挙げた方法以外にも実現する方法は数多くあります。
大前提としてカスハラ対策を重視しつつ、効果的な施策を試行錯誤し良い職場環境を作っていきたいです。

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橋本直幸

橋本直幸

旅行と読書が大好きなライター。コールセンター関連の最新トレンドや知識を共有し、皆さまの業務に役立つ情報を配信します。

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