コールセンターにおいて、応答率は顧客満足度や業務効率に直結する重要な指標です。
今回は、1席増減した際の応答率の変化について、アーランC式を用いて検証します。どれくらいの変化が起こるか具体的な数値を見てみましょう。
増席による応答率の変化を検証
アーランについての解説と、今回使用した計算ツールは下記リンク先をご参照ください。
1席⇒2席の場合
アーランC式は、コールセンターの適正な席数や応答率を算出するための計算式です。
まずは、以下の条件で、1席と2席の場合の応答率を比較してみました
条件
- 平均処理時間:10分
- 1時間あたりの入電数::3件
- 応答までの許容時間:15秒
結果
1席時の応答率は50.6%、2席時は90.4%となりました。
考察
1席の場合、アーランC式を用いると、応答率は約50%と算出されます。これは約2件に1件の電話が繋がらず、窓口は健全な運用状態とは言えません。お客様も対応するコミュニケーターも大きなストレスを抱えている状態です。
一方、2席に増やした場合、応答率は約90%にまで改善されました。これは、2人のコミュニケーターが協力して対応することで、放棄呼が大幅に減少し、顧客満足度が向上することを示しています。
もちろん席数が倍になるため、対応可能な件数も倍増するイメージは湧くかもしれません。しかし、応答率が50%から90%迄改善するのは想定以上ではないでしょうか?
10席⇒11席の場合
それでは次に、10席と11席の場合を比較してみます。
条件
- 平均処理時間:10分
- 1時間あたりの入電数:40件
- 応答までの許容時間:15秒
結果
10席時の応答率は83.9%、11席時は91.7%となりました。
考察
当然ですが、1席から2席にした時(席数が2倍)と比べると、今回(席数が1.1倍)は、インパクトは少なくなっています。しかし、ここでも小さくない差が生まれています。
まず11席では、想定応答率が90%を超えています。
筆者の体感ですが、90%を超える応答率の窓口において「電話が繋がらない」という意見は本当に稀です。お問合せいただいたお客様もコミュニケーターも接続に関するストレスは少なく、応答率においては適切な運用状態と言えるでしょう。そのため、目標応答率を90%に設定する企業も多いです。
11席の時は、この基準を超えているため、安定した応答状況でコールセンターが運用出来るでしょう。
一方で、10席では、想定応答率が80%台となりました。
ここでも筆者の体感ですが、80%~90%も大きな問題にはなりにくいです。ただし、少しずつ「繋がりにくい」状況が発生しだします。コミュニケーターも多忙になり、ミスも発生しやすくなります。
10席の時は、やや応答状況と窓口運用が不安定になりつつあると言えます。
また同条件で9席にした場合、想定応答率は約70%迄低下します。この状況下ではクレームが発生しやすくなり、コミュニケーターも疲弊し、離職率にも影響が出てしまうでしょう。
欠勤の影響力
今回の検証結果は、コールセンターにおける1席の重要さを再認識させられました。
これは適切な席数を算出する事が大切であると同時に、1名の欠勤が窓口運用に大きな影響を及ぼすことも示しています。
適正席数で運用しているはずなのに応答率が振るわないセンターは、たとえ少数であっても欠勤状況をチェックすると良いかもしれません。
一人ひとりが働いてくれる事の大切さがわかるね。
しかし、多くの人が働く中で、体調不良者を一人も出さないというのは非常に困難です。
そのため、適正人数で運用するための方法として、欠勤も事前に想定に含んでしまう事が有用です。
過去の実績から、欠勤も含めたセンター全体の実稼働時間を算出します。そして、それを前提に必要人員数を見直すと効果的でしょう。