企業がエンドユーザー向けに設置しているコールセンターやお問合せ窓口などは、昨今の人手不足や新型コロナウイルスの影響を受け、窓口の簡略化や無人化が進んでいます。ただ、企業が進める窓口の簡略化や無人化とエンドユーザーの要望には乖離が出始めているようです。2020年から始まった新型コロナウイルスも影響し、エンドユーザーが企業に求めるコミュニケーション方法にも変化が起きているようです。
有人対応と無人対応のメリット・デメリット
まずは有人対応と無人対応のメリット・デメリットをそれぞれ見てみましょう。
有人対応はお客様との双方向間でのコミュニケーションにより問題を解決していきます。どちらかというと顧客満足度重視でお客様に寄り添った柔軟な対応というメリットがあります。
これに対して、無人対応はお客様とのコミュニケーションをシステムにより自動化しますので、コスト重視となります。さらに人の常駐が困難な夜間や土日祝なども対応が可能になります。
有人対応を求める消費者は約6割
図1は、一般消費者が商品やサービスに関して何か不具合が発生した時に、どのような解決方法を望むかを聞いた結果です。調査対象は、回答を得た全国の20~79歳の男女1,647人です。
全体では、57.1%の回答者が「有人対応」を希望していることが分かります。一方で「自己解決」を望む人は31.1%と半数以上の人が有人対応を希望されています。
年代別に見ると、50代以上は64.6%が有人対応を希望し、自己解決を大きく上回っています。40代以下でも約半数が有人対応を望んでいることが分かります。
図2は、過去4年間の同質問の回答の比較です。
2020年以降、コロナ渦の影響もあり有人対応の希望が大きくなり、2021年には55.1%の人が有人対応を希望しているのが分かります。ECサイトなど、非対面購入の機会が増加する中、商品やサービスの問合せ、問題の解決には有人対応を希望する消費者が増えています。
利用窓口(チャネル)の傾向
図3は、直近の問い合わせで利用した窓口について年代・性別でまとめた結果です。
利用窓口(チャネル)としては全年代を通し「電話」がもっとも利用されており、特に60代以上の女性は約9割、男性は約7割が電話を選んでいます。20-30代のWEBツールに慣れた若年層においても6割が電話を選んでおり、利用チャネルとしては欠かせないものとなっています。2番目としてはWEBフォームの手軽さが若年層には支持されています。40-50代以降になるにつれて、電話以外のWEBツールの利用が低くなっていることが分かります。
近年では企業側の人手不足やコスト削減の取組として、FAQの構築やAIによるチャットボット導入など、問い合わせ窓口の無人化を進めています。一方でエンドユーザーは本当に問い合せわしたいことや問題の解決には「有人対応」を望んでいるということが分かり、企業側とエンドユーザーには乖離が発生しています。カスタマーサービスという観点から、「有人対応」は欠かせないものとなっています。
有人対応と無人対応にはエンドユーザーと企業側にとって、それぞれメリットとデメリットがあります。それぞれの特性を理解して、どの対応が一番良いのか多角的な視点から検証する必要があると感じます。