「Time Is Money」とは
2025年1月29日現在、ホワイトハウスのサイトで確認できなくなっています。
本記事は、執筆当時の宣言を基にしたカスタマーサービスの考察となります。
2024年8月12日、バイデン・ハリス政権は「Time Is Money」を開始しました。
この取り組みでは、企業が消費者に与える不必要な手間を減らすことを目指しています。

時は金なり!だね。
「Time Is Money」では、カスタマーサービスにおいて近日中に取り締まる7つの行動と3つの原則が挙げられています。
また特に、行動から2つ、原則から1つの話がコールセンターの在り方に直結するように感じました。

本記事ではこれらを基に、高品質なカスタマーサービスの在り方について模索してみます。
▽「Time Is Money」の原文は引用元をご参照ください。
問い合わせ窓口に関連した行動と原則
カスタマーサービスにおいて取り締まる行動(一部抜粋)
Cracking down on customer service “doom loops.”
⇒August 12, 2024 ~ whitehouse.gov
(日本語訳:カスタマーサービスの 「ドゥーム・ループ」を取り締まる。)
Taking on the limitations and shortcomings of customer service chatbots.
⇒August 12, 2024 ~ whitehouse.gov
(日本語訳:カスタマーサービス・チャットボットの限界と欠点を取り上げる。)
お客様が得るべきカスタマーサービスの原則(一部抜粋)
Americans should be able receive customer service on their terms and their own time without significant hassle or hardship.
⇒August 12, 2024 ~ whitehouse.gov
(日本語訳:アメリカ人は、大きな手間や苦労をすることなく、自分の時間や都合に合わせてカスタマーサービスを受けられるべきである。)
それでは一つずつ取り上げてみます。
「ドゥーム・ループ」の取り締まり
原文では、迷路のようなWEB上のメニューや自動音声に振り回され、なかなか問い合わせに至れない事を嘆いています。
最近の調査では、生身の人間と話す前に長いメッセージを聞かされることが、顧客サービスに対する不満のトップとの事。
※ドゥーム・ループは、負のスパイラルという意味で考えれば良いと思います。
昨今、WEBのFAQページやコミュニティサイトでの自己解決を勧め、電話の問い合わせを減らそうとする企業が多くなってきました。
しかし筆者の実体験上、オススメされて確認したFAQで解決する事は少なく、結局電話番号を何とか見つけ出して電話で問合せする事が多いです。
この時お客様目線では、最初から電話で問合せをした方が、問題解決は早かったことになります。

スムーズに自己解決できた場合は良いのですが、解決できなかった場合、不必要な時間を費やすというリスクをお客様側に強いている事は知っておくべきでしょう。
今回の宣言では、国民の貴重な時間を無駄に費やす事に懸念を示したのかもしれません。
チャットボットの限界と欠点
チャットボットは基本的な質問に答えるには便利です。ただし、より複雑な問題を解決する能力は限られている点が挙げられています。
ChatGPTをはじめ、AIを活用した多くのチャットツールが登場してきました。しかし、2024年現在そこで得られる答えを妄信する事は難しいです。
AIは人の思考とは異なるロジックで回答を作成するため、正誤の判断も異なります。
そのため思わぬミス回答(幻覚:ハルシネーション等)が生じる事もあります。

お客様は100%の正解を求めがちなため、完全にAIに頼り切るのは難しいかもしれません。
現実では、コールセンターの人間が誤案内をする事もあり得ます。
しかし、人と異なるAI回答特有のリスクは把握し運用する事が大切です。
人による案内 | AIによる案内 |
---|---|
問合せ窓口管轄内で発生 ⇒ミスの管理がしやすい | 問合せ窓口管理外で誤案内が発生し得る |
ミスは単発 | 大規模な誤案内の可能性 |
回答者が責任を持つ ⇒誤案内のリカバリーが可能 | 自動応答のため、責任の所在がハッキリしない ⇒誤案内のリカバリーが難しい |
自分の時間や都合に合わせてカスタマーサービスを受けられるべき
ここでは、都合の良い時間に、長時間待たされることなく、人間と話せるべきと述べられています。
お問合せ窓口では、よく「平日日中」にするか、他時間帯も対応するか検討します。
これは、「平日日中に企業活動を行なう」という企業目線がベースとなっています。しかし、お客様は仕事や学校が終わった夕方以降に問合せしたいことが多いです。

役所の手続きのニーズと似ているね。
そんなニーズにも応えられるよう、WEBのサポートページを充実させたり、ツールを活用した自動応答機能を付けたりすることもありますが、今回の取り組みでは「人間と話すこと」に価値を見出しているようです。
「お客様の都合に合わせた時間で、人による対応」を実現するには、勤務時間を調整し平日日中以外も窓口を開いたり、アウトソーサーへの外部委託を検討したりすることが必要となります。
ただしこれらは、労働力や委託費といったリソースが必要となるため、簡単には実現出来ません。
- どんな時間帯に問合せのニーズが発生するか。
- どんな解決を求めているのか。
これらのポイントをお客様目線で熟考し、窓口の改善を繰り返すことが大事です。
まとめ
米国の取り組み「Time Is Money」からコールセンター関連の考察をしました。
政策は変化するかもしれませんが、こういったニーズの顕在化は興味深いです。
米国のトレンドは数年遅れで日本に波及しやすいです。そのため、今後似た声が日本でも挙がってくるかもしれません。
そんな時は、一度お客様目線に立って、窓口の在り方を考え直すのも良いでしょう。