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「Time Is Money」米国の取り組み~カスタマーサービスの在り方~

「Time Is Money」とは

2024年8月12日バイデン・ハリス政権は、アメリカ人の日常生活での時間とお金を無駄にする問題に対処する新たな取り組み「Time Is Money」を開始しました。
この取り組みは、過剰な書類作業や長い待ち時間など、企業が消費者に与える不必要な手間を減らすことを目指しています。

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時は金なり!だね。

「Time Is Money」では、カスタマーサービスにおいて近日中に取り締まる7つの行動と3つの原則が挙げられています。
また特に、行動から2つ、原則から1つの話がコールセンターの在り方に直結するように感じました。

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本記事ではこれらを基に、高品質なカスタマーサービスの在り方について模索してみます。

▽「Time Is Money」の原文は引用のリンク先をご参照ください。

問い合わせ窓口に関連した行動と原則

カスタマーサービスにおいて取り締まる行動(一部抜粋)

Cracking down on customer service “doom loops.”
(日本語訳:カスタマーサービスの 「ドゥーム・ループ」を取り締まる。)

August 12, 2024 ~ whitehouse.gov

Taking on the limitations and shortcomings of customer service chatbots.
(日本語訳:カスタマーサービス・チャットボットの限界と欠点を取り上げる。)

August 12, 2024 ~ whitehouse.gov

お客様が得るべきカスタマーサービスの原則(一部抜粋)

Americans should be able receive customer service on their terms and their own time without significant hassle or hardship.
(日本語訳:アメリカ人は、大きな手間や苦労をすることなく、自分の時間や都合に合わせてカスタマーサービスを受けられるべきである。)

August 12, 2024 ~ whitehouse.gov

それでは一つずつ取り上げてみます。

「ドゥーム・ループ」の取り締まり

原文では、迷路のようなWEB上のメニューや自動音声に振り回され、なかなか問い合わせに至れない事を嘆いています。
最近の調査では、生身の人間と話す前に長いメッセージを聞かされることが、顧客サービスに対する不満のトップとの事。
※ドゥーム・ループは、負のスパイラルという意味で考えれば良いと思います。

昨今、WEBのFAQページやコミュニティサイトでの自己解決を勧め、電話の問い合わせを減らそうとする企業が多くなってきました。
しかし筆者の実体験上、オススメされて確認したFAQで解決する事は少なく、結局電話番号を何とか見つけ出して電話で問合せする事が多いです。
この時お客様目線では、最初から電話で問合せをした方が、問題解決は早かったことになります。

スムーズに自己解決できた場合は良いのですが、解決できなかった場合、不必要な時間を費やすというリスクをお客様側に強いている事は知っておくべきでしょう。

今回のアメリカの例では、国民の貴重な時間を無駄に費やす事に懸念を示したのかもしれません。

チャットボットの限界と欠点

ここでは、チャットボットは基本的な質問に答えるには便利ですが、より複雑な問題を解決する能力は限られていることが多い点を挙げられています。

ChatGPTをはじめ、AIを活用した多くのチャットツールが登場してきましたが、2024年現在そこで得られる答えを妄信する事は難しいです。
AIは人の思考とは異なるロジックで回答を作成しているため、正誤の判断が人とは異なります。
そのため思わぬミス回答(幻覚:ハルシネーション等)が生じる事もあります。

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お客様は企業に100%の正解を求めるため、今後その精度が上がっていっても、完全にAIに頼り切るのが難しいかもしれません。

現実では、コールセンターの人間が誤案内をする事もあり得ます。
しかし、人とAIでは管理の難易度が異なり、AI回答特有のリスクは把握し運用する事が必要です。

人による案内AIによる案内
問合せ窓口管轄内で発生
 ⇒ミスの管理がしやすい
問合せ窓口管理外で誤案内が発生し得る
ミスは単発大規模な誤案内の可能性
回答者が責任を持つ
 ⇒誤案内のリカバリーが可能
自動応答のため、責任の所在がハッキリしない
 ⇒誤案内のリカバリーが難しい

自分の時間や都合に合わせてカスタマーサービスを受けられるべき

ここでは、都合の良い時間に、長時間待たされることなく、人間と話せるべきと述べられています。

お問合せ窓口を新設する際、よく「平日日中」だけにするか、他時間帯も対応するかを検討します。
これは、「平日日中の時間帯に企業活動をする」という企業側の目線がベースとなっています。
しかしお客様側の目線では、仕事や学校が終わった夕方以降こそ、問合せしたいケースも多々あります。

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役所の手続きのニーズと似ているね。

そんなニーズにも応えられるよう、WEBのサポートページを充実させたり、ツールを活用した自動応答機能を付けたりすることもありますが、アメリカの取り組みでは「人間と話すこと」に価値を見出しているようです。

「お客様の都合に合わせた時間で、人による対応」を実現するには、勤務時間を調整し平日日中以外も窓口を開いたり、アウトソーサーへの外部委託を検討したりすることが必要となります。
ただしこれらは、労働力や委託費といったリソースが必要となるため、簡単には実現出来ません。

  • どんな時間帯に問合せのニーズが発生するか。
  • どんな解決を求めているのか。

これらのポイントをお客様目線で熟考し、窓口の改善を繰り返すことが大事です。

まとめ

今回はアメリカの新たな取り組み「Time Is Money」から、コールセンターに深い関連のある話をピックアップして考えてみました。

政策・取り組みは社会情勢に合わせて変化するかもしれませんが、現代においてこのようなニーズが顕在化したのは興味深いです。
またアメリカのトレンドが、数年遅れて日本で流行る事が多いため、似た声が日本でも挙がってくるかもしれません。
今ある体制を無理に変える必要はないかもしれませんが、一度お客様目線に立って、自社の窓口の在り方を考え直すのも良いでしょう。

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橋本直幸

橋本直幸

旅行と読書が大好きなライター。コールセンター関連の最新トレンドや知識を共有し、皆さまの業務に役立つ情報を配信します。

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