今回は、コールセンターの運用に活用できるアーラン式について御紹介します。
アーラン式は、特別な計算式で、理論上の適正回線数・席数を計算することが出来ます。
さて、コールセンターの運用において、席数は非常に重要な要素となります。
なぜなら、1席の過不足でセンター全体のパフォーマンスは大きく変化するためです。
そのため、新しく窓口を開設する時、多くの管理者は頭を悩ませます。また、既存の窓口の運用適正化を検討する時も同様です。
もし、そんな悩みを持った時は、アーラン式を用いてください。

必要席数の計算ツールも作ってみました!
みんな気楽に使ってね!
アーランB式とアーランC式
アーランB式で回線数、アーランC式で席数を算出
まず、コールセンター運用に活用できるアーラン式は下記の2つがあります。
アーランB式:必要回線数を算出できる式
$$Eb\left( 0,t\right) =1$$
$$Eb\left( r,t\right) =\dfrac{tEb\left( r-1,t\right) }{r+tEb\left( r-1,t\right) }$$
アーランC式:適正コミュニケーター数(席数)・応答率を算出できる式
$$P( > 0) =\dfrac{\dfrac{A^{N}}{N!}\dfrac{N}{N-A}}{\Sigma _{x=0}^{N-1}\dfrac{A^{x}}{x!}+\dfrac{A^{N}}{N!}\dfrac{N}{N-A}}$$

・アーランB式は、必要回線数
・アーランC式は、適正なコミュニケーター数(席数)、応答率
ここだけでも覚えましょう! ※テストに出るかもしれません!
ツールを使ってアーラン式を計算
ここで、上記の複雑な計算式をいちいち計算する必要はありません。
現在は、インターネット上に、無料でアーラン計算できるサイトがたくさんあります。
このたび、当社でも作成してみましたので是非ご活用ください!
サイト内で必要項目を入力するだけで、必要回線数・席数を算出する事が出来ます。
アーランB式
$$Eb\left( 0,t\right) =1$$
$$Eb\left( r,t\right) =\dfrac{tEb\left( r-1,t\right) }{r+tEb\left( r-1,t\right) }$$
アーランB式の計算に必要な情報
- 1件あたりの平均通話時間
- 最繁忙時1時間あたりの入電数 ※一番同時に電話が鳴る時を前提とします。
アーランB式で得られる情報
- 必要な電話回線数
アーランC式
$$P( > 0) =\dfrac{\dfrac{A^{N}}{N!}\dfrac{N}{N-A}}{\Sigma _{x=0}^{N-1}\dfrac{A^{x}}{x!}+\dfrac{A^{N}}{N!}\dfrac{N}{N-A}}$$
アーランCの計算に必要な情報
- 1件あたりの対応時間(後処理時間も含む)
- 単位時間あたりの入電数
- サービスレベル(●●秒以内の目標応答率)
※サービスレベルは15~20秒以内くらいに設定する事が多いです。
アーランC式で得られる情報
- 適正なコミュニケーター数(席数)
- 想定される応答率
ツールで計算する際の注意点
▽アーランB
・呼量という単位で直接入力が必要な場合があります。
⇒呼量については、本記事下部をご参照くださいませ。
▽アーランC
・1件の処理時間に、後処理時間も含めます。
・単位時間がツールによって30分だったり、1時間だったりします。
・最小時間は「秒」で入力する事がほとんどです。
・応答率=「応答した件数/総入電数」ではなく、「着信してから●●秒以内に応答した件数/総入電数」となります。
※この応答率は、「サービスレベル」とも言われます。
なぜアーランC式による計算が必要なのか?~席数~
ここで、何故アーランによる計算が必要なのか?を例を挙げて解説します。
※活用方法だけを知りたい方は、ここまででも大丈夫です。
例:1件につき平均10分間の対応時間、1時間に20件の入電
この例における受電業務の業務量は、10分×20件=200分となります。
この時、1人の社員が1時間フル稼働で各60分まで業務が出来るため、業務量だけで計算すると4席(60分×4名=240分)あれば本業務が運用可能に見えます。
結果として、1人につき5件(10分×5件)対応すれば、4名で20件対応可能という考え方も持てそうです。
しかし、この体制ではおそらく恐ろしい結果となります。
もしも、これが自分から電話をかける発信業務なら、問題ないかもしれません。
ところが、受信業務は、「いつ電話がかかってくるかわからない」という前提です。
残念ながら、コールセンター側に都合が良いタイミングで、すべての電話がバランスよく着信する事はまずありません。
※人間のバイオリズムが皆似通っているのか、不自然にどこかのタイミングに集中する事の方が多いくらいです。
- サービスを利用する「顧客の数」
- 各顧客がサービスを利用出来るまでの「待ち時間」
これらを「待ち行列理論」として数式で用いたものが、アーラン式となります。
これは、「待機時間中のみ新しい着信に対応出来る」という、現実の運用を前提としています。
そのため、アーランC式では、現実的な適正席数・応答率を算出する事ができます。
ちなみに、今回の例を4人体制で運用した場合(応答時間20秒以内を前提)、想定応答率は約36%という計算結果でした。
この体制では多くのクレームを生み、従業員も疲弊し、顧客満足度も大きく低下してしまう可能性が高いでしょう。
アーランで適正席数を算出した場合、6人体制の場合は約86%、7人体制の場合は約95%となりました。
なぜアーランB式による計算が必要なのか?~回線数~
ここまで、アーランC式による席数算出の必要性について、解説しました。
続いて、なぜアーランB式による回線数の計算が必要なのか?を解説します。
窓口として、必要な席数を算出すると、電話対応に必要な電話回線数も席数と同じにすれば良いのでは?という考えを持ちがちです。
実際これ自体は大きな間違いではないですが、適正回線数とは言えません。
理由は、コールセンターにおいて、全ての席のコミュニケーターが全員同時に通話しているという事はほぼないからです。
まず、着台したコミュニケーターの稼働状態は、大きく分けて「通話中」「後処理中」「受付可能状態」の3パターンがあります。
この中で、回線数(最大同時着信数)が影響するのは「通話中」のみとなります。
つまり、適正な電話回線数は、席数と一致するとは限りません。
そして、それを算出できるのがもう一つのアーラン式、「アーランB式」となります。

アーランBの回線数 ≦ アーランCのエージェント数
※回線数とエージェント数が同じになるか、またはエージェント数の方が多くなるはずです。
アーランについて
アーランとは、呼量の単位
次にアーランそのものについて解説します。アーランは、呼量の単位を示します。
※デンマークの数学者・統計家・技術者のアグナー・アーラン氏の名前から命名されました。
そして、その意味は、単位時間に対するトラヒック量(稼働量)を示すものです。
特定の時間、例えば1時間という時間の中で、1人が1時間フル稼働している場合、アーランは1となります。
▽アーラン(呼量)算出の例
※ツールで計算する際、呼量を入力する項目があれば、下記を参照にしてください。
例1)1件につき2分必要な電話対応を、1時間に30件対応した場合
⇒ 2分/件×30件 ÷ 1時間(60分) = 1アーラン
例2)1件につき2分必要な電話対応を、1時間に15件対応した場合
⇒ 2分/件×15件 ÷ 1時間(60分) = 0.5アーラン
例3)1件につき2分必要な電話対応を、1時間に60件対応した場合
⇒ 2分/件×60件 ÷ 1時間(60分) = 2アーラン
アーランの応用性
上述したように、サービス利用者の「待ち時間」を「待ち行列理論」に展開し、呼量(アーラン)という単位を用いて数式に変換したものが、アーラン式となります。
この時アーラン式は、サービスを受ける際にお客様が「待つ」事があるという当たり前の話を前提としています。
その上で、適正なサービス担当者を配置するのは非常に論理的な考えです。
また、この考えはコールセンターだけに留まる必要はありません。
多くのサービスにおいても適正な人員配置の検討に活用できるのではないかと思います。
アーランへの過信は禁物
最後に重要なポイントを一つ。
アーランはあくまでも机上の計算となります。
しかし、コールセンターの現場は生ものです。日々の様々な要因から、回線数・席数も調整が必要になります。
そもそも、アーランだけで算出すると、9時台は20席、10時台は15席、11時台は10席…と理論上の適正席数が算出されますが、現実の運用では実現困難な結果となる事が多いです。
アーランだけにとらわれず、時間帯毎に現実的なシフト調整も踏まえ、さらには前年迄の窓口の実績や管理者の経験をも考慮した上で、総合的に最も適正な人員配置を決定し運用をする事を強く推奨します。